漢詩詞創作講座初心者09 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社 TopPage

詩語表を使ってみよう

 いよいよ詩語表を使って七絶を書いてみましょう。七絶のパターンは四種類あります。@平韻平起こし。A平韻仄起こし。B仄韻平起こし。C仄韻仄起こし。このうち仄韻のBとCは後にゆずり、取り敢えず@とAの公式を書きます。

@平韻平起こし    
×○×●●○◎,×●×○×●◎。
×●×○○●●,×○×●●○◎。

A平韻仄起こし
×●×○×●◎,×○×●●○◎。
×○×●○○●,×●×○×●◎。

 ○は平字、●は仄字、◎は平韻字を入れて行けばいいのです。×の所は平仄どちらでもよい。但し七字の真ん中に平字が一字孤立してはいけない。ルールはそれでいいのですが、ここからがクロスワードパズルと違って作詩では何を詠むか決めなければならない。

 今年は寒さが急に来たので紅葉の美しいところがありました。十月の末に会津の湯野上温泉に行く機会がありましたが、渓谷沿いの露天風呂には紅葉が乗り出して覗いていました。今では混浴を避けて入浴時間を男用、女用に分けて使用する旅館が多いのですが、かえって女性が紅葉に触れて入浴する姿を連想させます。どうせなら玄宗
皇帝が楊貴妃に浴を賜わった華清池に思いを馳せて詠むことにしましょう。そこで第7講で紹介した太刀掛呂山著の「だれにでもできる漢詩の作り方」の詩語表を見ます。「題紅葉」という章があるので、そこを開きます。詩語表は例えばつぎのように並んでいます。

○○ ●● ○○ ●● ●○○ ●●○ ●○○ ●●○ ○●● ○○●
紅楓 錦繍 探秋 満目 満楓林 楓樹林 満山秋 感白頭 秋寂寂 紅塵外
清幽 半日 斜陽 青女 此登臨 石澗潯 試清游 紅葉鮮 遊子意 秋如画
・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

  ここからユニットを@かAの公式に填めて行けばいいのです。@(平起こし)を使うことにします。ここで考えなくては成らないのが脚韻です。下三字のところを見ると、尤の韻のところに「試清游」「感白頭」「満山秋」があるので、これを使って組み立ててみましょう。二字のところにも「紅楓」「青女」というのがあります。「青女」には「秋の女神」と註がついています。「そんなの何処にいるのだろうか?」ということにしましよう。

  ○○●●●○◎  ○●○○●●◎
  温泉戸外試清游,垂朶紅楓感白頭。

  ●●●○○●●  ○○○●●○◎
  緬想貴妃堪賜浴,誰何青女満山秋。

  温泉と賜浴は白楽天『長恨歌』の「春寒賜浴華清池、温泉水滑洗凝脂」から頂きました。これは剽窃ではありません。これも典故という大切な技巧です。林岫先生によると典故には歴史からの「史典」、行事からの「事典」、詩からの「詩典」があるとのことです。なお引用句が有る場合は、心ならぬ剽窃の誹りを受けないためにも、その旨を傍記する事をお勧めします。